2013年3月17日日曜日

手術の達人

おもに腹部を中心に手術に携わりもうすぐ22年が経過しようとしています。
幸いな事に開業医となった今も週に何度か手術に携わらせて戴いていますが
サポートが中心で自分が執刀することはあまりありません。
一抹の寂しさを感じながらも少し引いた目線から手術、外科医というものを
冷静な目で見る事が出来るようになった気がします。
よく上手な外科医とか手術のうまい外科医とかいいますが
いったい何が違うのか?
手術時間が早い人?出血量の少ない人?
研修医の頃はあまり違いが判りませんでした。
みんなが『上手や』、という人の手術も『???や』という人の手術も
あまり違いが判りませんでした。
強いて言えば手術がスムーズに流れるか否かという事ぐらいでした。
今、思うに手術時間の早さや出血の少なさ、スムーズな進行というのは
結果に過ぎなかったように思います。
僕が思う外科医の技量の違いとは?

それは『使える手』の数のように思います。

よく外科医で大事なのは左手(利き手でないほうの手)と言われます。
左手は術野を展開したり切除したい場所にトラクション(緊張)をかけたり
するので大変重要です。右手(利き手)しか使えない外科医
(右手も・・・は論外ですが(笑))の手術に入るとフラストレーションが
溜まるばかりですが両手を使える術者との手術はリズム良く進み、
結果的に手術時間が早かったり出血が少なかったりします。

でも、さらに上手な外科医は助手の手も上手く使って術野の展開や
トラクションをかけさせます。
まるで自分の手が3本か4本あるかのように。
そして『太鼓の達人』ならぬ『手術の達人』になると
手術に携わる全てのスタッフを自分の手足のごとく使って
手術を進めていくのです。
術野に集中するのは当然ですが術野だけでなく手術室全体を
広い視野を持ってマネージメントができるということが
とても重要だと思います。

外科医の志を表す言葉に「鬼手仏心」という言葉がありますが
千手観音や阿修羅の如く多くの手を自由自在に操ることが出来る、
そういう外科医こそが『手術の達人』と呼ばれるに値する人だと思います。

最後に最近読んだ論文に書いてあった
『麻酔科医から見たいい外科医のとは?』

1.手術が早い
2.出血が少ない
・・・となるほど最もな条件の他に

怒鳴り散らさない

というのがありました。

確かにそれも「いい外科医」の条件ですね(笑)
達人の域には達することは出来ませんでしたが怒鳴ることはなかったかな?

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